• 新聞はなぜ、原発を止められないのか——宮脇利充が読む一冊

  • Feb 28 2025
  • Duración: 13 m
  • Podcast

新聞はなぜ、原発を止められないのか——宮脇利充が読む一冊

  • Resumen

  • 2月18日、政府がエネルギー基本計画を閣議決定しました。この計画は概ね3年ごとに見直されますが、今回の最大の特徴は「原発回帰」が鮮明になった点です。

    これまでの基本計画には「原発の依存度を可能な限り低減する」という文言が入っていました。しかし、今回はその表現が削除され、「原発を最大限活用する」という方針が打ち出されました。具体的には、2040年度までに原発の割合を現在の約9%から約20%へ引き上げる計画です。さらに、老朽化した原発の建て替えや新設を認める方針も示されました。


    ここで重要なのは、新たな原発の建設費を誰が負担するのかという問題です。政府は電力会社ではなく、私たち消費者の電気料金に上乗せする案を検討しています。つまり、原発回帰の流れは私たちの生活に直結する問題なのです。


    この政策を決定するエネルギー審議会のメンバーを見ると、再生可能エネルギーに取り組む自治体や企業、環境団体、さらには若い世代がほとんど含まれていません。代わりに、財界関係者や原発推進派の専門家が中心を占めています。審議の場でも、推進派の委員には20分程度の発言時間が与えられる一方、反対派の委員の意見発表はわずか3分程度に制限されているといいます。


    こうした状況を踏まえ、今日紹介するのが 『新聞はなぜ、原発を止められないのか―こうして記事は消された。ある記者の手記―』(南方新社) という一冊です。


    🔶新聞と原発報道の現実

    本書の著者、吉田昭一郎氏は、熊本出身で西日本新聞の元記者です。彼は、佐賀県の玄海原発の取材を続けていましたが、次第に原発に批判的な記事が掲載されなくなっていくという状況に直面します。原発の避難経路の不明確さや、自治体の不安を伝える記事を書こうとすると、デスクのチェックを通らず、棚ざらしにされる。最終的には「今後、原発に関する記事は掲載しない」と言い渡され、新聞社を退職することになりました。


    吉田氏は、この状況を 「新聞が大手電力会社や政府の意向に忖度し、チェック機能を十分に果たせていない」 と指摘します。新聞社は社説などで国の原子力政策を批判することはあっても、具体的に九州電力の動向やローカルな問題について踏み込んだ報道をすることはほとんどないというのです。


    本書では、そうした報道の現場での葛藤や、原発推進側の影響力の強さが具体的に描かれています。新聞がどのようにして企業や政府の圧力に屈し、読者には見えない形で情報がコントロールされているのか——そのリアルな実態が浮かび上がります。


    🔶原発回帰の流れと私たちにできること

    本書を読むと、改めて原発問題は単なる技術やエネルギーの問題ではなく、 政治やメディアの在り方とも深く関わる問題 であることがわかります。エネルギー審議会の偏ったメンバー構成、新聞の忖度、そして消費者に転嫁されるコスト——こうした現実を知ることが、今後のエネルギー政策を考える第一歩になるのではないでしょうか。


    宮脇利充が紹介する 『新聞はなぜ、原発を止められないのか―こうして記事は消された。ある記者の手記―』(南方新社) 、ぜひ手に取ってみてください。



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